ミネアポリス「アートルネサンス」

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ミネアポリスへ飛ぶ。
ミネアポリスは「アメリカの冷蔵庫」とも言われる位置にあり、ボストン以上に厳しい冬を迎える。だからそこを訪ねるには涼しいこの季節が一番いい。北欧系の白人が目立ち、まだ9月はじめというのに、街の人は長袖を着て当たり前で、中には皮のジャケットをはおっている人までいる。

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ミネアポリスは「アートルネサンス」と称して2006年までに5つの主要な文化施設のオープンを予定している。その中にはGuthrie Theater (Jean Nouvel) 、Public Library (Ceaser Perri) Walker Art Center (Herzog & de Meuron) が含まれる。


もともとミネアポリスはニコレットモールやビルどうしを空中ブリッジで結ぶといった歩行者と車を分離し、市街地全体を立体的な歩行者動線で結んだ「ヒューマン」な市街地計画で有名だった。各ビルの低層部はショッピングエリアとしてあてがわれ、高層部にオフィス機能が集約される。これはいわゆるショッピング・モールの先駆的な一例でもある。実際その中を歩くとすぐにわかることだが、次々と脈絡なくインテリアが入れ替わる様子は、街が巨大な百貨店そのものと言っていい。それぞれの歩行者ゾーンに新しい最近では3M本社などもあって、安定した市制と好調なビジネスを活かし、その税収を公共的な文化活動に充当することから、最近では老巧化した公共的な建築の再建が盛んである。

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また一方で対照的に郊外には全米最大で市街地のスケールに匹敵する規模をもつショッピング・モール ’Mall of America’  が出現している。周辺には平原のなかに駐車場や空港向けのビルが距離をおいて孤立している以外に何もない。ショッピング・モールは外部への意識をまったく無関心を決め込んで完全にインテリア化したもうひとつの市街地である。ミネアポリスの「ルネサンス」は文字通り人文主義的に文化を導入することでそれとの差別化を図るということだろう。
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ウォーカー・アートセンターは市街地のエッジにあり、市街地の高層ビル街を見返すことができる程度の距離にある。既存の美術館を増築するプロジェクトであるが、敷地に余裕があり、ギャラリーを含む平屋の建物の上に劇場部分タワーが乗る構成にしている。
興味を引いたのは新築と既存の内部空間の相似的な関係。既存の建物の内部空間のシークエンスが新築の空間にも導入され、それを既存のキュービックな形態からダイナミックな形態に置換している。たとえば既存の美術館エントランスホールから階段を上って庭に面したホールに向かう動線は旧館にも新館にも用意され、隣接する展示室やカフェに結ばれている。旧館に使われているマテリアルは新館にも使われる。たとえば旧館の壁に用いられるレンガが新館には床材に使われたり、旧館ギャラリー床のテラゾに対して新館には壁にパール色のスタッコが塗りまわされ、少しニュアンスを換えることで光沢を強くしてより深みのある質にしている。
こうしたプランや素材の連続感があることで、いったんギャラリーに入り込むと、どこまでが既存でどこまでが新築かわかりにくい内部空間になっている。
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旧館にずるずるとつながる体験から浮かんだ残像のようなものをひっぱりながら敷地内の野外彫刻庭園に足を運んでみた。この美術館は庭園美術館といって、美術館なみの広さをもつ庭園に彫刻作品を展示していることでも有名である。庭園はモダン、つまりアメリカンなランドスケープデザインで、フラットな敷地にモダン建築の平面プランによく似た幾何学的なパターンの上に色とりどりの植栽が並ぶ。それぞれの作品は常緑樹木が刈り込まれた「緑の壁」によって囲みこまれ、そこを人々が散策する。
ここへの入場は無料でジョギングしながらやってくる人の背景にダウンタウンのビル街が広がっている。この一角には鉄板をレースのように葉っぱのパターンに切り抜いて美しい工作機械の彫刻がある。夕日を浴びるそれは、光と影の微妙な陰影を宙に描く。おそらく、この彫刻と同様に、新館の展示室上部のそこかしこに見られる葉っぱのパターンはそうした庭園の有機的なパターンと明らかに重なり合っている。抽出された構成やパターンのかさなりから生まれる場の反響が興味を引いた。こうした作法は以前訪ねたドナルド・ジャッドのマーファのアトリエによりいっそう確信的に現れていたけれども、実は探せば探すほどいろいろな構造なりルールが発見される。ただ一方で、彼らの常套句でもあるこの方法は、ここでは悔しいかな、目の付けどころににそういうものがしつらえているともいえそうだ。オーバーオールに感じるべきものがピンポイント的なものにとどめているところはどうなのか。
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メディアを見ている限り、最近の彼らの作品はビジュアルだけれども、個人的には初期のテートギャラリー以前の作品に比べて、たしかにあまり感心しないものもある。事務所の規模もオフィスも大きくなってきていて、それでコントロールが効いてないという批判も聞いている。
それでもこの建物に限って言えば、内部までコントロールの効いたものだといえる。この美術館はヴィデオアートが非常に充実していて、他の作品に干渉しないように小さなブースのような空間もしつらえていて、それが庭やロビーに向かって開かれているなど、美術作品と空間の連携も美術館自体が一種のインスタレーション的な効果をもって面白い。
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スティーブン・ホールの十字形平面をしたミネソタ州立大学の建築学科校舎。十字プランを既存の敷地に対して傾けることで各ウィングに囲まれた公共的な庭を周辺に開放するアイデアは秀逸。外壁に銅版とプロフィリットガラスの2種類を使っており、銅版からにじみ出る青銅色の錆がプロフィリットガラスの色と一致して美しい。
周辺の校舎が中庭型の閉じた構成に対してこの建物は解放的な平面形だが、実際にそこを使う人の動きを見る限り、この極寒の気候でその開放性はどこまで有効なのか非常に疑問でもある。強引に十字型の平面に面積を分散した結果、各ウィングの面積が狭くなるというデメリットも発生し、個人的には相互の関係が感じにくい印象を受けた。
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ジャンーヌーベルのGuthrie劇場(工事中)は周りを工業的な建物が並ぶ大通りに立つ。夜は少しやばそうな雰囲気である一方、その裏側には広々とした緑地が広がっている。敷地裏側の川に向かって突出したキャンチレバーが圧倒的に眼を引くが、そうした場所の特徴にもうまくマッチしている。建物の表面の多くを覆うパネルにはホログラムが仕込まれているが、どれだけの効果があるのか楽しみである。
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http://arts.minneapolis.org/map/index.htm
さて、明朝は彼らが学校にやってくる。彼らにリサーチの途中経過を報告しなくてはいけない。
アメリカでは祭日にもかかわらず、「お忍び」のようにわざわざその日にこられるとは面白い。しかしまだ寝れそうにないな・・・。
miya氏、死ぬほど忙しいらしいので、pallaの代理投稿です

「ミネアポリス「アートルネサンス」」への2件のフィードバック

  1. ご無沙汰してます。覚えてますか?michikaです。こんなところでmiya氏を発見するとは、びっくりです。私は3年前からNY在住です。最近ネット上でsnobの鈴木さんに発見されて、懐かしく思っていたところでした。私は今もフリーのフォトグラファーとして活動しております。ファッションが中心ですが、インテリア&建築関係の雑誌の撮影もたまにやっているので、ぜひいつかmiya氏の作品を撮影に行きたいものです。ボストンにいらっしゃるとか?近いので一度会えるとうれしいです。死ぬほど?忙しいとは思いますが、よかったらぜひ。くれぐれもお体に気をつけて、、ご自愛下さいませ。 

  2. おおmichikaさんごぶさた。NYはちょくちょく行くのでまた会えると思います。今月来月はあちこち飛び回ってますが、何とかなるでしょう。また連絡をメールでもらえますか?アドレスはmiya[アット]pallanoia([ドット]org([アット]は@、ドットは.です)

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