a signature of an architect

our assignment work for Algorythmic Architecture

1月に早々と学業を終えて、就職活動にいそしむ友人に会うことが多い。早々と就職を決めた友人もいれば、NYや西海岸に行き先を求めて今も忙しくポートフォリオ作成と面接をしている友人もいる。気の早いドイツ人のMartinは就職も決まらないままNYにアパートを引っ越してしまった。そんなちょっとした冒険心を素敵だなと思う。
そんな中、いつも学校のコンピュータルームにこもっている友人もいる。いったい何をしているんだ?と聞いてみると、ライノ(3Dデザインソフト)のマスターをしているとのこと。面接で本人の作品の話題よりも先に、それを使えるんだろうね、と当然のように質問されたので、焦ったらしい。


学校でも卒業生がリクルート活動にやってくることが結構多くなってきた。建築では全米でもっとも人気の高いといわれるSOMをはじめとする設計事務所がその大勢を占めるが、たしかに四角い高層ビルのボリュームをねじったり、曲面のサーフェースでくるんだりした彼らのパンフレットを見る限り、(so what–それが面白いかどうかは別として)そういうソフトウェアを使っているなというのがありありとしたものが目を引く。SOMのウェブデザインもパンフも、彼らのアイデンティティを直感的に伝えることができて、よくできているなと感心する。

SOM - world trade center in NYC

そんなちょっとした悪態も含めて思わず友人と話しこんでみたが、近い将来、CADツールは複雑な形状でも把握しやすい3次元に移っていく気がする。ソフト自体は出揃ってきているから、あとはソフトの価格(たとえばMayaのアンリミティッドは定価約100万円。Mayaのサイトをみると、日本ではなんと伊東豊雄事務所がお客様として紹介されているではないか。)と、設計から製作施工までの互換性が確保されたなら、一変されるかもしれない。
LAでF.O.Gehryや若手の建築家がそうした設計ツールを使えるのは、彼らの周辺に航空産業や特撮映画、コンピュータ関連の産業が存在し、そこから余剰している機材を安価で使うことができるからだという。LAから来た友人が皆コンピュータ関係の授業をもっぱら専攻していた理由はそういうところにもあるだろう。

Disney Concert Hall by Gehry

実際、ゲーリーにCATIAを売り込んだのは、そのような宇宙航空産業でソフトフェアを開発していた人で、GSDにもソフトウェアがいかに設計事務所の設計システムを変えたのかを講演に来た。
その人は現在、ゲーリー事務所の下請けとして、ゲーリーのほとんどすべてのプロジェクトに携わっているという。ゲーリー事務所の模型チームが作成した模型を別のチームがデジタイザーで立体的にポイントを拾い、そのデータを受けてライノやCATIAなりの立体図面を作りこんでいくのである。作成された図面は、立体データのまま構造事務所や製作サイドに流され、構造解析や工場製作といった具体的な次元に落とし込んでいく。そうした互換性をもった仕組みが、ある高度な知能と技術をもつ企業のネットワークのなかではすでに実現されている。
もちろんその副作用もあるようだ。たとえば、やや堅い話だが、ワークフローの複雑化とともに責任分担や作家の署名性の問題。現在はゲーリーの作品は世界中に展開され、またどれもひと目でゲーリーの作品と判断できるほどのユニークな造形をものにしているが、またそれゆえいろいろなトラブルも抱えることになる。そうしたトラブルの責任を明確にするため、あえてゲーリー事務所との役割分担をして、ゲーリーは意図的に彼らをプロジェクトに連名させず、あくまでも建築家ゲーリーとは別の組織に外注という形にしているとのことである。かくして彼自身の事務所は高度に分業組織化され2002年からは社名もThe Gehry partnership, Gehry Partners, LLP である。われわれが抱くアトリエ的な建築家の憧憬から彼はとうに離脱しているということになる。何をもって建築家が社会的責任を持ち、デザインに署名性を与えるのかという問題は、建築家が意識的でないとシステムの変化に翻弄されてしまうということだろう。しかしそのときモノを作る悦楽の手段を大きくシフトした彼自身の内面には、何か大きな変化はあったのかどうか、ふと考え込んでしまった。

Gehry House / Detail

昨夏、日本に一時帰国前に立ち寄ったLAでゲーリーの自宅(Gehry House)に立ち寄ったことがある。もちろんそのときはそうしたゲーリーの苦労も知るよしもない。
夕闇のせまる中で、自転車に乗ってちょっと思いつきでサンタモニカの住宅街のあの家を訪ねたのは7年ぶりほどだった。住宅そのものは7年前と少しも変わっていなかったが、家をとりまく植栽がとても大きくなっていて、巨大なサラダボールに家が載っているかのようだった。窓越しに薄暗い家に小さな灯りがともっているのが伺えるけれども、人が住んでいる気配が感じられない。ゲーリーはこの家にはもういないのか・・・?
そういぶかしんで並木を見あげていると、「ウィーン」とモーターの音。なんだ?と思ってその方向を見ると、ガレージの扉が持ち上がる。そしてシルバーのベンツにあの見覚えのある眼鏡をかけたふくよかな男が娘を助手席に乗せてハンドルを握っている。
「!」とそちらを唖然として見ていると、彼はこちらに手を振りながら車をゆっくりと大通りに走らせていった。
おそらく近所のスーパーに買出しに行ったんだろう・・・。そう思い描きながら僕も奇妙な満足感をもってその場を後にした。
Gehry House in Santa Monica

「a signature of an architect」への4件のフィードバック

  1. お久しぶりの投稿ですね。
    私もライノを勉強中です。
    windows仕様なのでありがたいですし、トライアルもあるしで勉強中です。
    3DCADですが、昨年の9月にautodeskのEXPOがヒルズで行われまして、そのときにオートデスクのPhil Bernstein氏が
    BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)と銘うっての講演を聞いてたのですが、
    設計・設備・管理の設計業務を「autodesk autocad revit series」というソフトを用いて行うということを推進してました。
    SOMのフリーダムタワーの設計に現在使用してるそうです。
    全て一貫して3次元で考えることでアイディアや形がそのまま次のステップへいけるのでコスト面でも優れると。
    (他にも色々とかいてあります、よろしければ参考までに
    確かに2次元よりは3次元の方が空間など掴みやすいかもしれませんが、
    日本では確認申請の時に×だろうなぁと思いました。
    結局2次元になってしまう気がします。
    ちなみにそのEXPOの最初に伊東豊雄さんが講演しまして(それが目的です)
    その時にもmayaの話しをされてたかもしれませんね・・・・・・・

  2. 確認申請でXというのは笑えますね。
    学校では大体のソフトは学校が支給して手に入ります。
    ライノや3dmaxはPCしか使えないとか、ソフトウェアの関係もあって、こちらではPCユーザーがかなりの割合を占めます。なにより安いということが理由のひとつですが。マックユーザーはPCと2台持つ人もいます。
    こちらではIBMとappleは学割でおよそ2-3割引くらいでしょうか。たとえばApple Closeout Special PowerBook 15" 1.67GHz 512/80GB SuperDriveで $1,450くらい。でも市販のdellの方が同じスペックで学割よりさらに安かったりする。一般的にアメリカはPCやデジカメのような周辺機器は日本よりずいぶん安い。
    マヤはalgolithmic architectureのセミナーもあってmel scriptからいじり回しましたが、分からないことはまだ多い。日々勉強ですな。

  3. えっ!
    そのPowerBook、日本では正規で30万ですよ。
    学割で26。
    倍近くも関税など諸々かかってるということですか・・・
    私もrhinoはまだまだです。
    日々精進です。

  4. 新しいデュアルでないタイプだから、値下げしたのでしょう。普段はもうちょっと高い。別の例ではApple iBook G4 14" 1.42GHz 512/60GB SuperDriveで$999.00。
    これくらいが目安かなと思います。 あまり断定的には言えませんが、GSDでポピュラーなラップトップは、IBM-T43あたりですかね。これなら重いマヤや地図データも割にスムーズに走るし。ただし、ブランド品ゆえ値段はそれなりにするので、同程度のスペックでdellを買う人も多いかと。あまり突っ張って高額なマシンを買わなくても学校の共用マシンで結構間に合ったりもするので、それで済ませる人も結構いるでしょう。
    そういえばそろそろ、GSDの合否の結果が出揃う頃ですね。応募された方々の吉報を祈ってます。

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