Free Section/自由な断面

void space on the 5th avenue
建物内部はガラスの屋根、壁に包まれている。その中に、大きな広場のような場所がある。まず建物の内部に入って目前に広がるのは、この巨大な吹き抜け、そしてその空中に浮かぶ各階のヴォリューム(建物の断面はこのリンクを参照)である。
つまり、まず建物中央に大きなコアシャフトがあって、それが建物全体を垂直に貫く。そのコアから各階のヴォリュームが独自の形をまとって空中に突き出す。その上から蚊帳のようにガラスのスキンが建物全体をバサリと包む。そしてガラスのスキンと各階のボリュームの透き間がこの大きな吹き抜けスペースとなり、各階のスペースをエレベータやエスカレータで結んでいる。

Boeing Technology Training Center Lab

普通のビルが同じ床面を反復して積み重ねているのに対し、SCL(Seattle Central Libraruy)ではまずフォーマルなアクティビティごとに各階がいくつかのクラスター(房)としてまとめられ、それぞれ独自のヴォリュームになっている。
下からそれを追っていくと、垂直コアはコンクリートの打放し。Boeing Technology Training Center Lab はエアロダイナミクス風の深紅の流面形。スタッフ部門は直方体にヤオトンのような中庭風の穴がいくつも開いたもの。書庫部門はマッシブな螺旋。そして最上階のHeadquartersはキルティング風の柔らかい箱。それが巨大な吹き抜けに浮遊している。
Rafael Moneo/ラファエル・モネオはこうした大胆な断面構成を「Free Section/自由な断面」と呼んでいる。これはもちろんLe Corbusier/ル・コルビュジェの有名な「自由な平面」を枕詞にしたもので、それぞれのヴォリュームがそれぞれの内部の都合に応じて建物全体の統一性から逸脱した造形を指している。

sectional condition - Image courtesy OMA

しかしここで見る「自由な断面」はLe Corbusier / ル・コルビュジェの「open floor plan/自由な平面」とまったく同一するかというとそうでもない。もうひとつの空間、つまりそれらを取り囲む残余空間ゆえに、である。このフリーセクションかつフリープランの特定のヴォリュームに対して、ネガ/ポジの補完関係にあり、その残余となる巨大な吹き抜け空間をもつからだ。この2つの特色の異なる空間が強いコントラストを空間全体に与えている。

volume for headquarter on the top

こちらの残余空間は逆にMies van der Rohe/ミース後期の建築をおもわせる、ガラスのスキンにつつまれた透明な空間である。読書、カフェ、視聴覚、イベント、ラウンジなど、複数のアクティビティが最上階、中間階、そして地上階にある残余空間にちりばめられている。
たとえば足元の地上階はLiving Roomと呼ばれる、道路に面した広場的スペース。そこからエスカレーターを上ったところにある中間階はMixing Chamberと名のついた下階を見下ろすことのできる多目的スペース、そこからさらに、螺旋型の書庫を貫くエレベータを一気に上り詰めた最上部にあるのがReading Roomと呼ばれる、全面ガラスのスキンに包まれたスペース。ここからはほぼ360°に広がるシアトルのパノラマを楽しむことができる。
こうもいえるかもしれない。Le Corbusier/コルの代表作Villa Savoyeが典型的にそうであるように、コルの空間ではOpen Plan/自由な平面をもつ屋内をはさむようにして最上階のroof garden/ルーフガーデンや中間階の中庭、そして地上階の pilotis/ピロティが屋外に開放された残余空間となったように、このSCLでは同様な構成にしてそれら残余空間を、後期Mies/ミースがアメリカで生み出した「オープン」な空間、あのガラスで囲まれた内部に置き換えたのだと。

plant and the fake plant

ここでジェフリー・キプニスの指摘を参考にすれば、同じ「オープン」な空間でもコルとミースの間には少々区別が必要になる。
なるほどコルとミースは互いに内部空間の床面を外部から隔てることにした点では一致している。コルはピロティ、そしてピロティからその上に浮かぶに内部空間に至る長い建築プロムナードを駆使して内部を外部から空間的にも時間的にも距離をとっている。
これに対してミースの内部空間にはそうした実測的距離は見られない。コルのように空中に積極的に新しい開放的楽園(外部空間、屋上庭園)を作るよりも、外部とガラスをはさんで対面したこの場所に、事物が重心もなく配される。そして傾き、歪んだガラスの境界面のところどころで内部の要素が押し出され、外部に浸透していく。また同時に外部の要素も内部に飲み込まれていく。外部の庭園が内部では床にプリントされたフェイクの庭になっているのは、こうした内外の視覚的な連続性と、物質的な非連続性をほのめかしている気がする。SCLの「Free Section/自由な断面」が行き着くところは、こうした残余スペースに向けて開かれた場所だろう。
こうしたコルビュジェ的空間とミース的空間という、2つの空間の合成はそれらがエレベータという建築装置によって串刺しに貫かれ、互いに異なる普遍的思考を異種交換するのである。これはレムが著書「デリリアス・ニューヨーク」で、エレベータがメトロポリスに林立する垂直的なインフラストラクチャーを、普遍的な全体性のもつ束縛から回避する、今日のアノニマスなコスモポリタンの舞台となる、そういえるのかもしれない。
….To be continued soon
volume ofr staff office
Mixing Chamber

「Free Section/自由な断面」への1件のフィードバック

  1. 相変わらず、明晰なナビゲート!
    やっぱり断面構成の妙って、面白いよね。
    で、僕は行ったことないからわからんけど、レムのあれ、様々をさておいて、さらにそんなところを全てぶっ飛ばして、図書館としてはちょっと外光が強過ぎる気がする。
    個人的に本は日陰で落ち着いて読みたいし、暑いところには行きたくない。
    っと、いう欲求に対しては、実際どうなのか教えてく下さい。

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