カナリア諸島

canary Islands Map
夏休みのある朝、学校に呼び出されてTV会議なるものに4人ほどの学生仲間と
同席する。モニターの向こうはスイスのバーゼル。”Hello, Guys,” と聞き覚えのあるドイツなまりの英語でスキンヘッドの男が現れる。
どういうわけかヘルツォークド・ムロンのthesis チームに昨年選考され、今学期9月から来年春にかけて、アフリカ沖にあるカナリア諸島をリサーチすることになった。内容はこれまでここでも書きとめてきた昨年度のものとは大きく違う。今回はスイスのETHとも協力して、アフリカ沖のカナリア諸島をリサーチ・提案をする。


カナリア諸島は、彼らが港湾地区の再開発のコンペを勝ち取っていることもあって、彼らにとっても知識が蓄積されており、その地域の最近の特異な状況がその敷地を対象としたきっかけとなったらしい。昨年は各個人一人一人が異なる都市を調査したため、情報量の不足や論理的な飛躍が目立った側面もあったが、今年ははじめにグループで情報と解析に取り組み、その後それぞれが異なる地域・都市を担当し個別に調査の深化と提言へのステップに取り組むことになる。
この10年間は圧倒的な人口が都市に集積するという世界中の急激な都市化の状況に特徴つけられる。統計的な数値が示すように、20世紀の初頭には都市人口は地球全体の10%程度だったが2000年には55%、2025年には50億人に達するという。地球全体の人口増加率が105%に対して、都市域では307%にも達する
(UN Global Observatory) 。

Old map of a town

都市とは何であり、どのような形態がどのような質をもち、どのような都市的活動がどのような物質的な変化と関係を結んでいるのか、そしてその結果それぞれの都市がどのような特異性をもっているのか。このthesis studioではそのような考察を通して、建築とアーバニズムが現代的都市にそなわる内在的な生成運動との相補的な関係を模索する。
カナリア諸島はグローバルな側面とローカルな側面が入り組んだ所である。スペインに属して政治的にはEUに属しているが自治州でもあり、経済的には属しておらず、Special Zoneという経済特区を設け、免税処置などの経済的厚遇をEUから得ている。この制作はしばらく控えめに進められてきたが、これからいよいよ本格的に施行される見通しである。
またトロピカル・リゾート地の代表格的な存在でもある。日本人がハワイといえば常夏のリゾート地を思い浮かべるように、カナリア諸島はヨーロッパ人のそれである。経済的な基盤は観光と熱帯農業で収穫したバナナやタバコ、ワインといった単一産品の輸出である。もともとギリシアのホメロスが神話に楽園として紹介し、ローマ帝国人が「世界の果て」と呼んだ場所だったが、後にスペインが征服し、アメリカへの航海中継地として発展した群島である。この頃、先の農産品が入植され、火山島という地質と相成って、この島独自のランドスケープの一部を構成している。
船舶貿易が衰退した後には旅客機の発達などによって大量の観光客を動員している。こうした経済的成長によって都市域は急激な発展を遂げた一方、産業を下部で支えるアフリカ大陸からの違法移民が急増し、EU各国への「侵入ゲート」として利用されている。また観光資源となるべき環境破壊も深刻になり、他の観光地域との競合激化から、昨年は観光収入が戦後始めて急落している。

Resort town

今回はそうした現象を生み出す内在的な構造を具体的に掘り起こし、それぞれの島の特異性を浮き彫りにしていく。今はなれないスペイン語の文献と格闘しているが、10月末にはチューリヒ、11月には2週間ほどかけてカナリア諸島にフィールドワークに行くなど、ハードだがそれなりに盛りだくさんのスケジュールが用意されている。不安材料でもあったH & de Mとの面会回数も結構あることや、GSDサイドでPicon教授が常任でアドバイザーとして就くことはとても心強い。
もちろん今回のリサーチに全く確信しているわけでもなく、試行錯誤するべき余地もあるだろう。たとえば今回のリサーチは後半に島ごとに担当者をわけてリサーチをするが、むしろ群島全体にわたって特徴的なテーマを抽出し、そのテーマに沿って特に特異となる場所を見出し、ある提言をする方法もありうるだろう。ただしジャックによれば、調査に当たって何か初めから偏見的なテーマによってバイアスをかけたり、ある特定のテーマのみに絞って敷地に内在する多元的な要因を切り捨てることは退けたいという意志があるとのことだった。このあたりは彼らなりの思い込みがあるということだろう。
・・・未知なものをはらみつつ、いよいよ始まった。
the city

13年前
  1. 都市における飽和は言われて久しいですね。東京でも何年も前から、首都移転の話しはでていますが、結局手間と金など諸々のことからか、動きは無いですし、きっと地震が起きるまでだれもその思い腰を上げないことでしょう。
    カナリア諸島、あまり聞いたことの無い名前ですね。場所も分からなかったですし。リゾートで、観光による環境破壊、よくある末路を歩んでるわけですね。
    都市の形態や物質的な変化、特異性・・・とても興味深いですね。

コメントは停止中です。